||地域振興研究||    調査のねらい施設の類型化・特徴等その他の産業施設の例

大学等が関連する産業支援施設
1.調査のねらい
 地方に大学が開設される例が多くなっている。大学を生かし、これを核に地域の産業振興を図ろうと考える自治体も多い。
 こうした背景のなかで、大学等が関連する産業支援施設を類型化し、特徴、問題点などを整理しようとしたものである。
 調査は1998年に行っているため、一部データ等に変化があると思われる。
 なお、大学等は関連しないが特徴ある産業支援施設をいくつか紹介する。また、「都市・地域開発事例集」にある産業系開発の諸事例も併せてご覧いただきたい。
2.施設の類型化と特徴、留意点など

 4類型化を試みた。

類型
特徴
留意点
事例
リサーチ・コア型

・周辺に立地している企業の研究開発の支援、大学等の研究施設と企業との連携支援等の役割を果たす
・民活法第2条第1号施設が代表
・具体的機能は、民活法で備えることが求められている4機能が中心(情報提供や飲食機能等も備わっている例が多い)
 @開放型試験研究機能(研究室や試験研究機器の貸与)
 A交流機能
 B人材育成機能(技術教育・研修等)
 C研究開発型企業育成機能(インキュベータ機能)

・運営は第3セクター(株式会社又は財団法人)が行う
・事業費は借入金で賄うため、採算性が重要
・利益が生まれる事業は<研究スペース貸与事業>(レンタルラボ)であるといわれている
・研修、交流機能は直接経費が賄えればよい程度の事業といわれている
・研究試験機器の貸与機能(オープンラボ)や情報提供機能は直接経費を賄うことも難しいというのが実状である

 

久留米リサーチパーク
 オープンラボ中心
つくば研究支援センター
 人材育成・交流中心型

国立大学地域共同研究センター型

・昭和62年度(制度そのものは昭和58年度)から、順次、全国の国立大学に設置されてきている
・専任教官、客員教官、汎用的な研究設備が備えられている
・主な業務は3つであるが、中心は下記@、Aであるまた、部屋貸しなどは行っていない
 @民間企業との共同研究、受託研究
 A民間企業等の技術・研究開発に対する相談・指導
 B技術者・研究者に対する技術教育、指導

・教官の人件費や施設・設備の整備費・維持費は国の予算で賄われている
・共同研究にはいくつかのパターンがあるが、いずれの場合も民間が一定の負担をする
・センターを利用する教官が偏る傾向がみられるとともに、導入yされる機器等はその教官の専門分野によるところが大きい

 

各国立大学
私立大学共同研究センター型 ・民間企業と共同研究を行ったり、委託研究を行う点は、国立大学と同じである
・しかし、各大学によって特色がある
・1つの研究には年間2,000万円程度、基礎研究では数年の時間が必要

・早稲田大学理工学総合研究センター
 独立的に運営
 企業等の研究費で運営
・立命館大学リエゾンオフィス
 レンタルラボやオープンラボなどももつリサーチコア的な性格を有する

工業技術センター型
(秋田県の工業技術センターを例にする
・中小企業を中心に技術力向上を支援することを目的としている
・主な業務内容は
 @試験・研究(基盤的技術開発等の独自研究)
 A技術移転
 B人材育成
 C情報提供(新技術等の情報提供等)
 D施設・設備の開放
 E技術研究会の設置・開催
・県により整備・運営。採算性は格段問われるものではない
・決算状況をみても、歳入は歳出の10%程度である。人件費が50〜60%を占める
・設備の整備、更新なども比較的容易に行われるが、研究費の70〜80%を使う(加工機器は購入しないで、民間が必要とする比較的長期間使用される高度な評価機器を中心に購入)
・独自研究(政策研究と呼んでいる)には毎年1億円単位で3年継続している


 参考)リサーチ・パーク型の採算性確保のための10の方策−「サイエンスパーク研究ネット会報No.1」から
    @ 中核的企業や自治体が支えるスキームを構築する
    A 収入は最低2つのルートで確保する(賃貸収入では採算性は確保できない)
    B 運営基金等を造成し、収入補填に充てる工夫が必要
    C 公設民営方式の活用
    D 土地の無償賃貸(が望ましい)
    E 職員は出向の形にし、出向元が人件費用を負担する
    F 無利子融資は据え置き期間(3年以内)で勝負する
    G 逐年収支計算ではなく、基準年度収支での事業収支を検討する
    H 機器等は再投資のスキームを予め考えておく
    I 自治体が運営費等えを支援する場合、議会対策上、財団法人が望ましい場合がある  


3.その他の産業支援施設の例

1.坂城テクノセンター(ホームページはhttp://www.icon.pref.nagano.jp/usr/sakaki-techno/)
 ○人口人の長野県坂城町工業の中核的な支援施設
 ○建設・運営は、在団法人さかきテクノセンターである。建設費は9億円(町補助1.6億円、国・県補助2億円、無利子借入金5.4億円)
 ○性格・特徴 @収益施設ではない A借入金については、町から財団に補助金を交付し、財団が返済 B運営経費も町からの補助
 ○組織 事務局は5名(2名は坂城町から出向)。常勤センター長1名。非常勤コーディネーター2名
 ○主な事業 @研究開発支援事業(研究グループを組織化し定期的な研修・研究会開催)
          A技術高度化支援事業(助言・相談・斡旋)
          B情報収集・提供事業
          C研修事業(テクノ交流サミット等の開催)
          D試験・計測事業(開放試験機器の賃貸事業等)
          E一般事業(子供科学教室、テクノスクールの開催)
 ○施設規模 敷地面積4,164u・延床面積1,864u

2.貸工場型インキュベータ
 (1)花巻市起業化支援センター(ホームページはhttp://www.michinoku.ne.jp/~hicsato/com_info.html)
  @設置目的
   ・花巻市で事業展開を計画し一時的に活動拠点が必要な起業家に貸工場貸与
   ・企業の研究開発、産学官連携による共同研究の支援(センターハウス)
   ・測定機器等の利用提供を通して新規起業、新分野進出などを目指す企業の支援拠点
  A設置・運営の主体
   ・設置は岩手県花巻市、運営は同市及び花巻市技術振興研究会
  B業務
  ・アドバイザー派遣事業(起業化コンサルタント派遣事業等) ・産学官共同研究促進事業 ・技術移転事業 ・研修事業 ・受託研究員派遣事業 ・情報収集提供事業
  C施設概要
  ・敷地7,733u ・センターハウス延床874u ・貸工場A棟5棟床面積各94u ・同B棟5棟床面積各163u
  D利用料
  ・貸研究室 月額61,000円/月 ・貸工場棟A53,000円/月 同B棟92,000円/月
  E入居条件
  ・機械系製造業及び製造関連サービス業
  ・資格 a.研究開発型企業で、産学共同で開発に取り組むテーマをもつもの
        b..高度技術保有企業で市内に工場展開を図ろうとするもの
       c.新たに高度技術設備を導入し市内に独立して開業するもの(新たに操業する場合は5年間、その他は3年間入居できる(原則))
 (2)富山市ハイテクミニ工業団地
  @設置目的:新たに独立開業しようとする人を援助する工場施設
  A対象業種:金属製品、一般機械器具などの製造業など
  B事業主体:富山市
  C施設内容:S棟 31棟・床面積92u、M棟 12棟・床面積144u
  D使用料:S棟52,500円/月、M棟78,750円/月
  E使用期間:5年(延長5年)
 (3)浜松都田インキュベートセンター(MIC)
  @設置目的:起業家の支援と育成
  A特徴:製造部門と研究開発部門、両者に対応
  B場所:浜松市 テクノポリス都田 県工業技術センター内
       (製造部門は工業技術センターに近いことが望ましい)
  C対象業種:製造業、印刷業、ソフトウェア業、情報処理サービス業など
          上記事業を操業しようとする者又は創業後5年を経過していない者
          優れた技術力を有する者
  D施設概要:全体 鉄骨平屋建2棟 10室 延床面積:800u
          工場仕様:95u・4室
          研究室仕様:70u・6室
  E使用料:工場仕様34,500円/月・研究室仕様25,400円/月
  F使用期間:今後創業する者5年間
          すでに創業している者−5年から事業年数を控除した期間     

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